
Taichi Nakata’s Web Site
都市化に伴う環境変化が植物の形質進化に及ぼす影響
近年急速に進む都市化に伴う人工地の拡大は生物の生育地や周囲の環境を大きく変化させる要因の一つです。
このような環境改変が生物の生育地の減少や絶滅を引き起こす一方で厳しい都市環境に適応する生物もみられています。
これまでの研究では、「都市vs非都市」や「都市の中心部からの距離」といった単純な比較によって植物の都市適応を
議論してきました。しかし同一の生育地集団に都市化が及ぼす影響を評価した研究例は限られていました。
私は都市から里山環境にかけて広く生育するツユクサを対象に
研究してきました。水田畦畔に生育するツユクサ集団に着目し、
都市化の拡大が植物の形質にどのような影響を及ぼすかを野外調査と
栽培実験により検証しました。その結果、都市の集団では葉の数が少なく、
葉が厚くなる進化的な応答を示すことが明らかになりました。
[参考論文]
*Taichi. N & Ushimaru. A (2024) Trait variation along an urban–rural gradient in Asian dayflower:
the contribution of phenotypic plasticity and genetic divergence, Plant Biology
加えて、都市環境の中には残存する農地や造成された都市公園やアスファルトの隙間といった
多様な生育地環境が形成される中で、生育地環境の多様性が植物の進化の多様性をもたらす可能性が指摘されています。
これらの生育地から採取した種子を用いて栽培実験と集団遺伝解析を行い検証した結果、草丈や葉面積の増加、葉数や地上茎数の減少といった都市集団に特徴的な形質変異がみられました。また花の咲き始める時期は都市の農地集団と公園集団で異なることから都市生育地間でも変異が起こることがわかりました。これらの形質変異は、地表面温度の増加や人工的な被陰が起こることで駆動していることが示唆されました。さらに遺伝解析の結果からこれらの局所適応によって形質分化が起こっていること、集団間の景観要素の違いが大きくなるほど遺伝的な距離が大きくなることが明らかになりました。
[参考論文]
*Taichi. N, Nakahama. N, Ohmido. N & *Ushimaru. A (2024) Habitat diversification associated with urban development has a little effect on genetic structure in the annual native plant Commelina communis in an East Asian megacity, Ecology and Evolution
*Taichi. N, Nakahama. N, Ohmido. N & *Ushimaru. A (2025) Adaptive trait divergence of annual plants in response to urban habitat diversity in a megacity, Journal of Ecology


多様な花向きがつくられる進化の背景
多くの被子植物は送粉者という花粉を運ぶ動物によって繁殖が行われます。
花の色や形、匂いはより多くの送粉者を誘引するために多様化したと
考えられています。
その中でも私は花の向きが送粉者の誘引にどのように影響するのか、
降水量などの環境要因が花粉や柱頭などの繁殖器官に損傷を与えるのかを
操作実験や訪花観察を行い検証しています。
対象種としたキキョウでは、横向きの開花は、送粉昆虫の誘引を高めると
同時に降雨による繁殖器官へのダメージを低減していることが明らかになりました。
[参考論文]
*Nakata. T, Rin. I, Yaida. YA & *Ushimaru. A (2022) Horizontal orientation facilitates pollen transfer and rain damage avoidance in actinomorphic flowers of Platycodon grandiflorus, Plant Biology
